【台本】かぜのゆくえ

クリックで画像を表示
2016年8月10日~14日 中野 ザ・ポケットにて上演。

■あらすじ

「かぜはどこからふいてくるの?」

結婚前夜、最後の挨拶の前に娘は母親にたずねる。
窓に映る自分を見つめ、母親はゆっくり語り出す。

それはまだ、雪が冬に降っていた頃のお話。
海が一望できるクジラ山に喋らない男が住んでいた。
風が吹き、大事な人を失った事を知った男は
広大な庭にポツンと電話ボックスを置いた。
その中にあるのはどこにも繋がっていない黒電話。
受話器から聞こえるのはそこに留まる風の音。
風とだけ、男は話した。

ある日、山の下で轟音が聞こえた。
黒い化け物が全てを飲み込んだ。
男は叫んで泣いた。
こんなに泣いたのは、生まれて以来二度目である。
悪夢を見つめる男の目に、山を登ってくる小さな黒い塊が映る。
男に近づくにつれその塊は、形を人に変え、ゆっくりと目を開く。
男の声に反応する事なく、それは電話ボックスに寄り添い腰を下ろした。

風が吹いた。

「ジリリン。ジリリン。」それは鳴る。吸い込まれる様に受話器を取る男。
「・・・・・。・・・もしもし・・・。」男の耳に思いもよらない声が帰って来る。
「・・・ただいま・・・。」
こんなにもすぐに訪れるものだろうか。
もう枯れてしまうくらい流したばかりなのに。

男は、泣いていた。
こんなに泣いたのは生まれて初めてである。

カートの中身

カートに商品は入っていません